山本の返答(4)1998.08.09

三輪さんへ

(先日の鈴木さんの作品について)
> それが本当に爆弾として機能するか、爆発する可能性を秘めているかが問題です。
> そもそもぼくは「これじゃ爆発するわけないじゃないか!」と批判したわけです。

うん、その通りですね。

> なぜ「これじゃ爆発するわけないじゃないか!」といったのか?それは上記コメント
> にあるような、古い皮袋でも中身が「木の実」ならば大丈夫、と考えるような
> 表現の形態と内容を区別できると信じる(二重構造という言葉をぼくは使いました)
> 発想がそこに残っているからではないか、と指摘しました。実際に上記コメントでも
> 「木の実」は大丈夫でもワインやビールだとまずいかもしれないと告白している
> わけです。そんな条件付きの自由の中で本当の「爆弾」など作れるのでしょうか?

作れるはずはありませんが、私は古い皮袋を、表現の条件と考えているわけではありません。

> >作品も、それを発表する形式が今目の前にあって、表現上何の支障もなければ、
> >特にそれを否定する理由はないわけですよね。これは別段保守的な考え方では
> >ないと思うんですけど。
>
> 「表現上何の支障もなければ、」とありますが、大きな支障がそこにあることが
> なぜわからないんだ、表現の形式は古くても中身は新しいなんてことは
> あり得ないんだよ!とぼくは言っているのです。

ちょっと言葉足らずだったために誤解があるようですが、私の言う表現とは、二重構造の中身のことではありません。二重構造は置いておいて、ともかく何か作品(またはそれに準ずるもの)があって、それが実現されるときに表現が成り立つ、それだけのことです。
「表現上何の支障もなければ、目の前にある形式も否定しない」とは、例えばこれをやりたい!と思って次に目にしたテンプスという場が何の制限にもなり得ないのならば、やってもかまわないと思うのです。だからピアノを2台使う曲ならばあの会場では出来ないし(ピアノが1台しかない)、ピアノ1台ではあってもマイクを立てて弾き語りものならば(古いな〜)、やはり爆弾にもならないのでやりません。
すなわち、木の実を運ぶときにかたわらに皮袋が落ちていた、それを使うか使わないかは勝手である、もし使ってもそのときに生じる袋&木の実という二重構造は木の実そのものには基本的に無関係である、ということです。 (ビールやワインについては、ただ単に運べない、というだけのこと。)

> もちろんそれなりのフィードバックがあることもわかっています。また、その
> フィードバックが大きいのかわずかなのかは問題ではありません。ぼくが
> 問題にしているのは、それが何かに結びついて行くのか?という点です。

これは鋭いご指摘ですね。このフィードバックが最近甘いなー、と思っていたところに、三輪さんからメールを頂いたわけですが。

> >同感です。でも何らかの方法によってエキサイティングになったとしたら、
> >それはもう古い革袋だし、コムロになっちゃいますよ。
>
> そこですよ!ぼくが言いたいのは。
> 今までの会話の本質は、ほぼこの言葉に集約されています。
> やってもみない、真剣にやろうともしないで、コムロになる以外に他の方法は
> ゼッタイにあり得ないと信じる短絡的、独善的発想!

コムロはただのメタファーの一つですよ……。
でもコムロを皮袋にたとえた用法は間違いですね。

> ゲンダイオンガクの皮袋とコムロの皮袋以外には思いつかない発想の貧困!
> 自分(達)で新しい皮袋がつくれないかと考えてもみない怠慢!

皮袋を作っちゃったら二重構造が生じてしまうではないですか。
二重構造の発想を持たないためには、まず皮袋を用いないことです。

……どうも皮袋の定義、というか意味あいが行き違っているようですね。私の場合、それを二重構造の外側というレヴェルだけで考えているのです。そして僕の今までの解釈では、三輪さんは、その皮袋の外側から(つまり皮袋のあるなしに関係なく)ものごとをを発想しなければいけない、とおっしゃっているのではないかと思ったんですが。

> そこであなたは、「そんなことできっこない〜!」と言っているだけです。
> さらに言うなら「そんな必要性はぼくにはない」と言うわけです。

ええと……。全くそんなことないんですが。私の文脈のどこでそう解釈されましたか?
多少混乱してはいるので誤解される要因はおおありだとも思いますが。

> その必要性を感じないならば、(今回のぼくの批判は、この必要性を指摘
> することで成り立っているので)この話はほぼ一回りした、ということに
> なると思いますがどうでしょうか?

必要性を大いに感じるのですがそう思われていないようなので、もう少し続けましょう。

山本裕之

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