労労亭の歌
詳細情報
作曲者 山本裕之
演奏時間(分) 10 min.
楽器編成 Vocal-ens.,P.
備考 「創る会」委嘱/テキスト:李白=松浦友久
作品ノート 『労労亭の歌』は田中信昭氏の委嘱により作曲、2004年8月に「創る会」によって初演された。作曲は、やはり昨年7月に初演されたヴォクスマーナ委嘱作品『賢治祭』と全く並行して、その年の春に行われた。

『賢治祭』は俵万智の短歌をテキストとして用いた。日本人が聞いて明瞭に意味の分かる現代語で、という条件を自ら課していた。かたや『労労亭の歌』は、日本語の読み下し文とはいえ、聞いただけではなかなか意味が分かりにくい漢詩を用いている。同時にふたつの似たような編成の作品を、言葉の意味の聴取という観点から正反対の方法で作曲したのはもちろん偶然ではない。

当初は、結果として曲を聴いてみた時に、ふたつの作品の間にどのような差異が生ずるのか、という点に興味があった。しかし書き始めてみると、それは作曲のスタンス自体に大きく影響する差異であることが分かった。考えてみれば当たり前なのだが、現代短歌では、その意味が聞いて分かるさまを保守しようとすれば、言葉の意味やフレーズが音楽的フレーズの支配権を握るようになる。それに対して漢詩のように聞いても意味が分かりにくい言葉は、音節そのものの音的な扱いに注意がいくので、いわばヴォカリーズの性質が強くなり、書法はどちらかといえば器楽的になる。

ちなみに短歌の場合、音節に分解して意味性を消すということは出来なくはない。しかし逆に聴覚レベルで漢詩から意味性を増幅させることはかなり難しい。そこで『賢治祭』では、言葉の意味の聴き取りやすさはそのまま温存して、『労労亭の歌』のテキストの意味のわかりにくさと素直に対比させることにした。

未知の外国語のように「意味も何も分からない」というわけではなく、言っていることは分かるのに意味が通じない、という状況が面白いのだ。それは、私がかつて岩手県の遠野で聞いた語り部による民話が、言葉はほとんど分かるのに話を理解できなかったという経験からきている。

『賢治祭』に続き、『労労亭の歌』も同じヴォクスマーナによって、そして私の多くの作品を演奏していただいている中村和枝氏のピアノとともに演奏されることを、とても嬉しく思う。
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