毎回、楽しみにしている伊藤さんの企画だが、今回は僕と
同世代の作曲ということで、音楽そのものに対する考え
に近いものを感じ、今までの中でも非常に面白い企画
だったように思う。
それにとても美しい方だった。
話の中で”猿”が出てきたが、考えてみれば猿と人との
違いに「音楽」がある。猿は音を楽しむことはないそうだ。
でも、チンパンジーだかの種類の中には、一日のうち数時間
一人の時間が必要だそうで、それがないとノイローゼ
になるそうだ。なんだか微笑ましい。
結局はつきつめると、脳とかの問題になる。これは音楽
も他の分野も変わりがない。
イルカムの話もあったのだがテクノロジーに関しては
おそらくイルカムの現代音楽家より、秋葉原や楽器店に出入りして
いる人間の方が詳しいだろう。
ドビュッシーが、ガムラン音楽を見た時に
言ったという「彼らは息をするように音楽を身につけたのだ」
と同じように、日本のテクノキッズは
特別な教育を必要とせずに、かなり高度な事をやっているのだ。
ただ最近はあまりの多くのサンプル(音)を探すという作業に若い音楽愛好者
は時間を取られ過ぎているのではないかと思う。自分も
含めてこのことは洗いなおしてみる必要があると感じている。
そもそもテクノロジーは自分の脳の中の再現を可能に
してくれるもので、既存の音をならすだけの
ものではないのだから。
宇宙船ミールで CMが撮られる時代。
再度、ドビュッシーの言葉を借りる。
「私は、飛行機が飛び交う時代の音楽を創らなければ
ならない」
クロード・ドビュッシー
僕たちは、
インターネットの網を越え、
ミールのおじさん達が何かを感じる
本当の意味での宇宙の時代の音楽を
つくらなければならないのだ。
作曲家 前田考一