「今月の鈴木治行のすべて」で,湯浅譲二+
寺山修司のラジオドラマが取り上げられている
のを見て,さすがは鈴木さんと唸ってしまいまし
た。
6,7年前だと思うけど,NHKが60年代に
作成したラジオドラマの再放送という企画番組
があったのですが,そのときに僕もこのラジオ
ドラマを聴きました。
当時のラジオドラマというのは,手法的にも
非常に「実験的」なものが多くて(というかその
企画番組で聴いた範囲でしか知らないですが)
当時聴いても非常に新鮮だったという記憶が
あります。できあがった台本や録音の完全に
済んだ台詞に「付随音楽」を付ける,というの
ではなく,脚本家と作曲家が作業の最初の
時点から徹底的にこの表現形態の可能性を
検討し,それをフルに生かすようにコラボレート
していました。これによってたぶんラジオドラマは
「君の名は」とか「鐘の鳴る丘」(だっけ?)流の
映像のないテレビドラマみたいなものから
真に独自の世界に踏み込んだ,と思うのです。
最近「ラジオドラマ」がどうなっているのかよく
わかりませんし,日本以外の国ではどうなって
いるのかわかりませんが,このところ作曲家で
こうしたメディアに積極的に関わる人というのは
殆どいないようですね。(個人的には現在,音
楽における「劇」的なジャンルの中ではオペラ
よりもおもしろいと思う。)
一時代終わってしまったということでしょうか。
そういえば湯浅氏も今やコンサートミュージック
としての現代音楽の押しも押されぬ大家となっ
てしまいました。